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再び登頂アタックと別れ

うさぎさんのお遍路道中記

作成日:2011年08月29日 訪問日:2011年08月27日
21番札所 舎心山太龍寺


無事最初の山である二十番札所を越え、次の札所へ向かう。一度下って再び登頂にチャレンジだ。長い坂道を下る。途中滑りそうになりながらも前から後ろから見守られ軽快に下った。山の下りは大変だ、というようなことを聞いたことがあったがピンとこなかった。登るより下りが断然楽だと信じていたのだ。
なになに、下りの苦痛を直ぐに味わうことになる。まず膝にきた。ブルブルガクガク膝が震える。太もも、膝の関節が痛いのに続き、足の指先が猛烈に痛いのだ。なんなんだぁ~と心で叫びながら2キロほど下ったところで休憩をいただいた。伊吹のお父さんから「膝が震えてるね」とご指摘があった通り、ブルブルガクガク震えが止まらない。膝が笑うどころか、大爆笑しているのだ。
皆は平気なようだった。すごい人達だ。異常だ。

ここから数百メートル進むと大きな橋があった。那賀川だ。時刻は午前9時20分、川の中では男性が鮎釣りをしていた。満々と水を湛えた透き通るようなきれいな川だった。
今度お遍路に来る時は水着持参間違いなしだ。
ここから進むにつれ、徐々に登り坂はきつくなり、いつしか登山道に入っていたのだった。

鶴林寺に登る道同様、丸太の階段が多く、足を大きく上げながら一段一段登らなければならない。歩幅がいつもの生活では使わないくらい大きくなるので疲れもひとしおだ。
登っては休み、登っては休みしながら出来るだけ皆に遅れをとらないよう頑張って登る。
やっとのことで二十一番札所に到着。
あ~着いた~と喜んではみたものの、本堂は更に階段を上った遥か彼方にあり、気がとおくなる。
本堂は今年7月の台風で倒れた木が直撃し、とても痛々しい姿になっていた。
今は仮本堂を作り、修理している途中なのだ。
仮本堂でお参りしていると、団体バスお遍路さん達に取り囲まれ居場所を失ってしまった。仕方なく隅のまた隅に身を潜め、ここまで無事導いてくださったことへのお礼を言った。次に大師堂へ行くが、ここでもまた違う団体バスお遍路さんに行く手を阻まれ、皆さんが立ち去るのを暫くまってお参りすることにした。このお寺はとかく人気が高いようだ。

納経所のところに戻り、ご朱印をいただく。すると納経所の方が「歩きですか、大変ですね。これをお持ちください。」と太龍寺の絵ハガキをくださった。
とても感じの良いお坊さんで、優しい目が印象的だった。ありがたや、ありがたや。
お礼を言い、夫に交通安全のカエルの形の御守りを購入。
伊吹のお父さんが、隣の建物にある廊下の天井に描かれた龍の絵が素晴らしいと言うので、覗いてみた。太い線で力強く描かれた龍が天井一面を駆け抜け、いまにも飛び出してきそうな迫力に、口が開きっぱなしだ。素晴らしいとしか言いようがないのだ。
二十一番札所から1キロ上ったところに「舎心ケ嶽」があり、お大師様が座って遥か山々を見下ろしている、と言う伊吹のお父さんのアドバイスを受け、皆で見に行くことにした。道には一番から八十八番までのご本尊が並び、これまで打ったお寺、これから向かうお寺を不良遍路さんと「あ~懐かしいね~」とか「次回はここまで行けるといいね~」などと話ながら上った。
てっぺんに着くと、岩の上にお大師様の背中姿が見えた。伊吹のお父さんが、岩をよじ登りお大師様のもとへ行く。それを見て我慢しきれず私も続くが、やはり岩が大きく一人で登れない。そこで登場、不良遍路さんが先に行き、私を引き上げてくださった。それを見たソンちゃんが後に続いた。まさに数珠つなぎロッククライミングだ。
お大師様のところに駆け寄り、同じ目線で山々を眺める。素晴らしい景色だ。
一人であったならこの景色は拝めなかっただろう。
お大師様の背中に負ぶさるようにしがみつき「お大師様、ここまで導いてくださってありがとうございます」と叫ぶ。広くて温かい背中だった。最後に肩が凝っていたので揉んでさしあげた。かなりカチカチだったのだ。お大師様はお忙しいのだろう。
そんな私達のハシャギぶりを、伊吹の奥様が写真に収めていた。

岩を下りるのも一苦労だった。下りる足場に全然足が届かず、伊吹のお父さんに手取り足取り手伝っていただいた。

時刻は正午を少し過ぎたところ。小雨が降ってきたので菅笠にビニールカバーを装着し、下山する。
途中、すだち畑が広がっていて、伊吹のお父さんが私達に一つずつ取ってくださり、食べやすいようにナイフで半分に切ってくださった。疲れた身体を柑橘の爽やかな香りが癒してくれた。「やっぱり、自然の恵みはうまい」と笑顔の伊吹のお父さんの横で、不良遍路さんが「まあ、自然と言うよりは人が作った人工の畑ですけどね」とボソリと言ったのを私は聞いてしまった。不良遍路さんはなかなかの悪である。
何だかんだ騒ぎながら、また元気よく歩きだした。

一時間ほど下ったところに宿があり、伊吹ご夫婦とはここで最後ということになった。
皆で集合写真を撮り、お別れの握手を交わす。出逢った時は嬉しいが、やはり別れるのはとても寂しく辛い。ほんの数日間だったが、もう何年も一緒に旅してきたような感覚で、涙を我慢しきれなかった。
何度も何度も振り返り手を振った。私達の姿が見えなくなるまで、お二人は見送ってくださった。
この先は三人旅。
ソンちゃん、不良遍路さんと共に歩むのだ。
暫く沈黙が続いた。不良遍路さんが「そんなに泣いたら塩分も水分もなくなるよ」と優しく慰めてくださる。
上を向いて目を閉じ、涙が止まるのを待った。
暑い8月の午後、目を開けると真っ青な空が広がっていた。

 
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この岩をよじ登ると会えるのだ

この岩をよじ登ると会えるのだ

案山子 2011年08月30日 コメントNO:106

山登りお疲れ様。今度は転がり落ちなくて良かったですね。
本当に皆良い人でこれはお大師が巡り合わせてくれたんでしょうね。
豆の手当ての仕方参考になりました。今日早速皆買いに行きました。
台風が来ているみたいなで多分今頃海沿いを歩いている頃だろうから海にはあまり近づかない様にしてください。
イメージ的に泳げ無さそうだから。間違ってたらごめんなさい。

ezweb.ne.jp

なすび猫 2011年08月30日 コメントNO:107

案山子さへ

私のマメ手当て術、あまりあてにならないかも(笑)
詳しくは登山家さんなどに再確認してくださいね。

今日は一段と暑かったです。海沿いを延々と歩く辛さが身に染みました。
今日もいろんな方に助けていただき、皆に生かされていると改めて実感しました。

海はとても波が荒く、台風が影響していると思われます。ただし、私の泳ぎは達者です(^^ゞお任せあれ。

いつも本当に応援ありがとうございます。
明日は早朝から海沿いを歩き、この旅一番の長距離に挑みます。ちなみに40キロ以上、平地&山道です。大丈夫か心配ですが、頑張ります。

docomo.ne.jp

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