ラスカル

うさぎさんのお遍路道中記

作成日：2014年04月29日 訪問日：2014年04月15日
45番札所 海岸山岩屋寺

書き忘れていたが、前夜泊まった旅館での出来事。
それは早朝５時のこと。
歯磨き、洗顔を済ませ、部屋に戻り身支度をしていた。
朝食後に宿代の清算があるため、おつりが出ないように準備しておく事を忘れていたので、さんや袋代わりに持ってきたカバンから財布を取ろうとした時、財布の横で何かがうごめいた。
声にならない悲鳴をあげた後、蜘蛛かと思い、カバンを指で摘み逆さまにして振ってみた。
財布やリップクリームがバラバラ落ちてくるが、肝心の蜘蛛が出て来ない。
恐る恐る覗いてみると、頭、手、尻尾が見えた！
「ギャー！！誰か?！」
ついに早朝に悲鳴をあげてしまったのだ。
カバンを摘み、廊下に飛び出し、隣人の松山の男性に助けを求めた。
飛び出して来た男性がカバンから取り出した物は、なんと、ヤモリだったのだ。
全長５cmほどのヤモリは、ぺたぺた歩いて去っていった。
腰が抜けるかと思ったこの出来事、朝食の際に話題になって、みんな口々に
「ヤモリは家を守る生き物だから、縁起がいいんだよ。」
とおっしゃる。
ダンディ水谷さんにしては
「縁起がいいから、連れて行け。」
他人事のように言う。
が、しかし、お気付きだろうか。
ヤモリは家を守るからヤモリであって、カバンは守ってくれないと思う。
この世の中に、カバンモリが居るなら、是非連れて帰りたいと思った朝だった。

大寳寺を打ち終え、ダンディ水谷さんと岩屋寺に向かう。
その道中ベンチで休憩していると、またお尻から毛の生えたおじいちゃんと、同行する先達さんに会った。
ダンディ水谷さんは以前にも何度か会っていたようで、毛の生えたおじいちゃんは
「社長！元気にあるいとるかー！」
と遠くからでっかい声で話しかけてきた。
ダンディ水谷さんと、私は、お尻から毛の生えたおじいちゃんと先達さんに何故か敬礼。
ダンディ水谷さん曰く、あの尻毛のおじいちゃんは行者さんらしい。
ホラ貝を吹き、野山を駆け回り修行されているとか、いないとか。
私の興味は、あのお尻から生えた毛だ。
次に会ったら聞いてみよう。

今夜の宿である古岩屋荘にザックを預け、身軽で岩屋寺に向う。
岩屋寺の下に到着すると、あの長い階段が待っていた。
必死になって上る。
今日はこれが最後の修行だ！
勢い良く登っていると、お尻から毛の生えたおじいちゃんに追いついた。
「おっ、ねーちゃん頑張っとるなぁ！」
でっかい声で話しかけられた。
一人では会話するのが怖いので、「はい、頑張ってます。」
と軽く会釈して一先ず通過。

本堂、大師堂に辿り着き、お参りしていると大阪から来た耐えずしゃべり続ける男性が現れた。
お参りをしてきます、と言ったにも関わらず、男性はロウソクを立てる時、お線香を立てる時、更にはお経を唱えている最中にまで話しかけてくる始末だ。
それにはさすがのダンディ水谷さんも呆れていた。
すると、お尻から毛の生えたおじいちゃんが到着した。

おじいちゃんがお参りを済ませるのを待ち、意を決して聞いてみた。
「お尻から生えた毛は何ですか？」
おじいちゃんはでっかい声で
「これはアライグマの毛じゃ。山で修行する時は、岩や土の上に座るのじゃ。その時にこれがあれば尻が汚れたり、冷えたりせんじゃろう。」
なんと、アライグマの毛だった。
他にも、鹿や熊の毛も使われていると言う。
「野山を駆け回り、大変キツイご修行をされているのに、お尻は修行しなくていいのですか？」
つい、聞いてしまった。
「馬鹿者、尻が冷えたら大変じゃ。」
笑ながら答えてくださった。
やはり、どんな辛く苛酷な修行でも、お尻は大切にするものだと、ありがたい教えをいただいた。
隣で私達のやり取りを聞いていた、あだ名付け名人のダンディ水谷さんが行者さんに『ラスカル』というあだ名を付けた。
この後、私達の間では『ラスカル』と呼ぶことになる。

大寳寺の山門を出て左に進んだ山道から岩屋寺を目指す。

途中崖崩れがあり、足元が悪かった。

崖崩れを通過すると、峠御堂トンネルの上に出た。

私も同感です。

前回登った階段は、今回はパスした。団体さんの中年女性三人が登り、下でその旦那さんらしき三人が恐々見ていた。女性が強い世の中になったのを感じる場面だった。

お尻から毛の生えたおじいちゃん。行者さんと聞くと怖いイメージがあったが、とても優しく楽しいおじいちゃんだった。大変な修行をされているせいか、身体は引き締まり、かなりの健脚なのだ。

余談ですが、お風呂上がりのオヤツ。牛乳は欠かせない。