作成日:2014年02月06日 訪問日:2012年09月20日
64番札所 石鈇山前神寺
吉祥寺を打ち終え、国道から一本中に入った住宅街の道を歩く。
次の札所までは3.2キロの道のり。
景色を眺め、秋めいてきた空を見上げたりして歩いた。
登校途中の小学生が元気にあいさつをしてくれるのが朝から嬉しく元気になる。
車の通りも少なく、時折自転車とすれ違うだけの道は歩きやすいのもいい。
少し山道を上がると山門が見えた。
時刻は午前8時25分、64番札所前神寺に到着したのだ。
境内は広く、奥に長?く続いている。
お手洗いの前のベンチにザックを置き、奥にある立派な本堂に向かう。
既に車遍路さんらしい二組のご夫婦が参拝していた。
本堂で家内安全、大師堂では「ととろさん」に今日会えますようにとお願いをした。
納経を済ませベンチに戻り休憩していると、金剛杖の異変に気付く。
なんと、鈴が無い。
あの大切な鈴が無いのだ。
鈴のリズムに合わせて歩いてきた長く辛かった道のり。
慌てて周りを見渡すが落ちていなかった。
朝一番、あったのかどうかさえ分からなかった。
もしかして、険しい横峰あたりで落としてしまったのかもしれない。
泣きそうになる。
ため息をつきながら、ダメ元で納経所のお守りコーナーに鈴が無いか見に行くと、なんと有るではないか。
黄金に輝く鈴を購入した。
お守りもたくさん売っていたので、出会うかもしれない「ととろさん」に記念に渡そうと思い買っておくことにした。
スキップでベンチに戻り、少し短くなったマイ金剛杖にいそいそと新しい鈴を装着する。
ゆすって鈴を何度も鳴らしてみた。
やはり、鈴が無いと調子が出ないのだ。
泣きべそをかいていたかと思えば、今度はスキップぎみの足取りで先に進むことになる。私は忙しい性格だ。
時刻は午前9時、今日はもう札所は無く、28キロ先にある伊予土井駅近くの宿を目指して歩き出した。
前神寺を出てアスファルトの坂道を下るとお寺の駐車場に出た、ここにも東屋があった。
その先を遍路シールに従い、右へと進む。
遍路道はここから国道11号と住宅街を抜ける細道に分かれる。
私はもちろん、細道だ。
国道沿いはお店は多いが、車が行きかうと歩き辛いから嫌いだ。
住宅街と言っても、田んぼや畑も多く解放感があるし、木陰や自販機だってある。
真新しい鈴のリズムに合わせてどんどん進む。
住宅のあるところは電信柱やガードレールに遍路シールが貼られている。
民家が無くなり田んぼだけの道に出た時、道が分かれていて迷いそうになった。
遍路シールを探すが、どっちの道にも電信柱は無い。
と足元を見ると、アスファルトに「ヘンロ」と直に書いてあった。
なかなかやるじゃん、讃岐ノ国。と呟きながら先に進んだ。
しばらく歩くと加茂川にぶつかる。
加茂川橋を横目に伊曽の橋を渡ると小さな公園があり、遍路地図を見ると武丈公園のようだ。おトイレもあるので休憩することにした。
朽ちかけた木製のベンチにザックを下し、おトイレを恐々覗く、、、やっぱり止めた。
ザックを担いで歩き出そうとすると、近くのお寺から出て来たおばあちゃんに道が違うと指摘された。
「お遍路さん、どこまでいかれるの?三角寺さんはあっちの道だよ。」と言いながら指さすのは国道11号だ。
「この道からも行けるみたいなんです、、、けど、、、。」否定するのは申し訳ないし、おばあちゃんが決して間違ったことを言っているわけでは無いので、語尾が小さくなる。
おばあちゃんは西条市の方ではなく、ご親戚のお家に来ていた方で、車で遍路をしたことがあるとお話してくださった。
確かにこの道は車遍路には向かないからなぁ。
どうしようかと考えていると、三角寺まで送ってあげようかとお車接待を申し出てくださった。
せっかくの申し出で嬉しかったが、今日は三角寺を打たず、途中の宿に泊まることを説明し、お気持ちだけいただくことにした。
おばあちゃんを見送り、また細道の遍路コースを歩く。
この辺りから段々身体が怠くなり、腹痛が酷くなってきた。
暑さも更に増すばかりだ。
国道と合流したところにファミリーマートがあったので、休憩することにした。
店内に入り、お手洗いをお借りした。
時刻は午前11時30分、お昼ご飯を買って食べることにする。
一人の時のお昼はほとんどがパン。
本日のランチメニューは甘?いワッフルと、甘?いらくれんのコーヒー牛乳。絶品である。
店外の隅に置いたザックのところに戻り遍路地図を見るが、この先は東屋も無さそうなので、ここで食べることにした。
ザックの上をテーブル代わりにして食べた。
15分ほど休憩し、痛み止めを飲んでまた歩き出す。
国道からまた細い住宅街の道に入り、先ほどのコンビニから3キロほど歩いた萩生という地区に無人お接待の休憩所があった。
古い民家だろうか、戸口を開放して自由に休憩出来るようになっていた。
座るところもあり、歩き続けてきた遍路にとっては何ともありがたいものだ。
ここでランチにすれば良かった、と悔やみながら座り込む。
誰も居なかったので、足の状態を確認するため、靴と靴下を脱いで汗を乾かす。
テーピングを巻き直し、今夜の宿の予約を入れることにした。
体調が悪ければ手前のMISORAさんにお願いしようかと思っていたが、何とかここまで来ることが出来たので、遍路仲間おススメの「つたの家さん」にお願いすることにした。
時刻は午後1時になろうとしていたので、靴ひもを引き締め歩き出す。
住宅建ち並ぶ道を、地元の方に挨拶しながら歩く。
みなさん、ちゃんと挨拶を返してくださる。
しかし、暑さは厳しくなり、体力も笑顔も奪われる一方だった。
だんだんローペースになり、国道に出たところにあるスーパーM2さんの自販機で冷たい缶コーヒーを飲んだ。
カフェイン補給をし再び歩き出すが、下腹部がズーンと重苦しく痛み微熱もあるようだ。
道は次第に国道の長い上り坂になる。
暑い、とにかく暑くてめまいがしてきた。
これは、いかん!このままでは溶けてしまう。
と思っていたら、喫茶店「コーヒーハウスホットワン」さんが見えてきたので、たまらず入る。
冷房が効いた店内は天国のようだった。
天国に行ったことはないが、きっと夏は冷房が効いているに違いない。まさに極楽浄土。
ザックを下し、メニューを見ると夏の必須アイテムかき氷があるではないか。
すかさず抹茶ミルクを注文した。
時刻は午後2時半、ノートを取出しここまでの時間や出来事をメモし、大阪の伊吹さんに経過をメールした。
しばらくして出て来たかき氷は結構な大きさで、顔がニヤけてしまう。
いざ食べようとすると、汗だくだった身体が冷房ですっかり冷えてしまい、寒くて寒くて。
今度は寒さとの闘いとなった。
外に持って行って食べたらどれだけ美味しいか。そう考えながら頭をキンキン言わせながら食べた。
伊吹さんは体調が悪くなってきた私を心配し、伊予三島に友人が居るから助けてもらいなさいと返信をくださった。
体調も考えず、かき氷と格闘している今の私の姿を見たら、きっと怒るであろう心配ぶりだ。
大丈夫ですと、返信を返す。
もう夕方だ、お遍路ぽーたるの「ととろさん」には結局出会えなかったと残念に思いながら、喫茶店を後にし、宿までの残り8キロを歩き出す。
鳥肌が立っていたので、店外に出ると暖かくて気持ち良かった。
すっかりクールダウンした身体に気合を入れ、坂道を登っていると対抗車線から一台の車が私の横に停まった。
運転手さんが叫ぶ、「うさぎさんですか?」
なんと、「ととろさん」だった。
自転車か歩きで出会うはずだったので、ビックリした。
すごいぞお遍路ぽーたる!!
やっと出会えて嬉しかった。初めてのご対面なのでちょっと緊張気味の私に、可愛い笑顔で挨拶をしてくださった。
あちこち探してくださったようで、彼も諦めかけていた時に見つかったと興奮気味に話してくださった。
用意してあったお守りと、納札を渡すと、彼も納札を書いてくださった。
「この先も頑張って、いつも応援しています。」そう励まされて嬉しくて嬉しくて、今日の疲れもどこへやらだ。大きく手を振り、ととろさんとお別れした。
笑顔を取り戻し、元気に歩き出す。
爽やかな青年だったなぁ。ととろさんのように応援してくださる方がいる、それほど嬉しいことはない。結願まで頑張って歩き通そうと思った。
四国中央市に入り川を越え、長閑な景色を見ながら歩く。
道端には彼岸花が咲き誇っていた。
午後4時30分、番外の延命寺に到着した。
お参りを済ませ、納経をしていただき、近くに東屋があったので少し休憩することにした。
ここから宿までは1キロ弱だ。
東屋で座っていると、町内放送が入る。
昨日から70代のおばあさんが行方不明らしい。すごく心配になる。
ご家族は心配で眠れぬ夜を過ごしただろう。服装や容姿について詳しい放送があったので、来た道で会っていないか良く思い出すが心当たりは無かった。
早く無事に見つかってくれるとよいのだが。
しばらく休憩し、宿に向かった。
午後4時50分宿に到着、今夜の宿「つたの家さん」は遍路仲間の評判も上々だ。
女将さんは評判通り優しく、親切な方だった。
お部屋に案内されると、久しぶりのベットだ。
施設は古いが清掃は行き届いていた。
今夜の宿泊客は私一人。夜だけ地元の方の宴会があるようで、一時だけ賑やかだった。
お風呂私一人だけなので、ゆっくり浸かれてリラックスできた。
食事は一階のお食事処でいただく。品数も多く、美味しいごはんだった。
食後部屋に戻り携帯を確認すると、大阪の伊吹さんがご友人の方に連絡を取るようメールをくださっていた。
明日の三角寺登頂を助けてもらいなさいとの内容だ。
でも、悪いので大丈夫だと返信すると、遠慮するなと叱られた。
遍路地図を広げ明日の行程を確認していたら、いつのまにか寝てしまい、気付くと午後8時を過ぎていたので、慌てて伊吹さんのご友人に連絡し今夜の宿の所在地と明日の時間を打ち合わせた。
前神寺の境内は広い
新しい鈴、これが無いと調子がでない。
田んぼ道の遍路案内。足元にも注意です。
伊曽の橋で加茂川を渡ります。白く見える橋が加茂川橋。
お昼ごはんはいつもこんな感じ。
ひまわり畑がありました。穏やかなお天気で長閑です?。
「コーヒーハウスホットワン」さんのかき氷、美味しかったですよ。
この辺りから、彼岸花をよく見かけるようになりました。
番外の延命寺
あらっ、写真が横になっちゃった(汗) つたの家さんの夕食、美味しかったです。
「もしも」の時はお借りします。
なつかしい~ス(^^v あの時、うさぎさんと会った時のテンションが戻ってきた~。
dion.ne.jp
ととろさん
こんにちは、寒い日が続いていますがお元気ですか?
その節は、本当にありがとうございました。
出会えた事、お大師さまパワーでしたね!
一年半ぶりにお遍路ぽーたるを開くと直ぐにととろさんの元気な日記が出てきたので、嬉しくなりました。
あの時いただいた遍路ストラップと雲辺寺の絵、大切にしています。
緑の納札二枚もちゃんと保管してますよ。
次回は錦札をくださいね(笑)
また遍路再開です。
これからもよろしくお願いします。
au-net.ne.jp
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